第1問
(1)事例AとBは、甲地(A所有)・乙地(B所有)の所有者である。(2)昭和59年ころBはAに対し、甲地の一部を分筆して売却してほしい、と申し入れ、これを受けて、Aは甲地の一部を分筆し、100u(丙地)を代金900万円でBに対し売却した。(3)Bは、分筆した土地を昭和59年12月1日に引渡を受け、以降駐車場として継続して利用している。
(4)ところが、平成18年にいたって、Aが現況にしたがってAの占有部分(甲地)を測量してみたところ、丙地を分筆したのち400uあるはずのところ、350uしかなかった。(5)そこで、AはBに対し、「Bの占有部分は、本当の境界から50u分はみ出ているのではないか。はみ出している部分を明け渡してほしい。」と申し入れた。(6)なお、概略図中オ=カを結ぶ直線がAの主張する境界、キ=クを結ぶ直線までがBの占有部分である。また、ウ=エ・ケ=コをそれぞれ結ぶ直線は、公法上も、また私法上も確定した境界ではない。
(7)Bは、Aの主張に対して、売買に基づく分筆には何ら問題はなかった、3.3uあたり30万円、という約束で100u売ってもらったのであって不法占有はしていない、と主張している。(8)Bによれば、Aは丙地分筆前の甲地と乙地の境界について誤解しているのではないか、そもそも分筆前の甲地(ウ=エ=コ=ケ=ウを結んだ範囲)は450uしかないはずだ、そうでなければ、甲地と丁地との境界が誤っているだけではないか、と言ってAの請求に応じようとしない。
[小問1]
AがBに対して、50u分の土地の返還を求めるためには、どのような権利に基づくどのような請求権を主張をしなければならないか。30字以内で記載しなさい。
所有権に基づく返還請求権としての土地明渡請求権
[小問2]
Aは、この紛争を解決するために、民間紛争紛争解決手続としての調停の申立を希望している。A代理人土地家屋調査士Xとして(弁護士と共同受任していることとする)、調停申立書における申立の趣旨を記載しなさい。
申立の趣旨 別紙物件目録記載1の土地と同目録記載2の土地の境界が別紙図面オ=カを結んだ直線であることを確認する旨の調停を求める。
[小問3]
AからBに対して、甲地と丙地の境界がオ=カを結んだ直線であることを前提とした解決を求める趣旨の民間紛争解決手続が申立てられた場合において、Aの主張を基礎づけるためには、どのような事項を調査して、どのような事実を確認すべきか。箇条書きで記載しなさい。
丙土地は甲土地から分筆された100uの土地であること
甲土地は400uあるはずであること
[小問4]
A・B間の民間紛争解決手続において、昭和59年に売買された土地は、ウ=エ=カ=オ=ウを直線で結んだ範囲であって、甲地と丙地の境界はAの主張どおりオ=カを結んだ直線らしいことが判明した。BはAに対してどのような法的な主張ができるか、簡潔に記載しなさい。また、当該主張を基礎づけるためにはどのような具体的事実が主張・立証される必要があるか、箇条書きで記載しなさい。
Bはオ=カ=ク=キ=オを直線で結んだ範囲については長期取得時効が完成していることが主張できる
→昭和59年12月1日にオ=カ=ク=キ=オを直線で結んだ範囲について引渡を受け占有を開始したことの立証
20年経過時に占有していたことの立証
第2問
土地家屋調査士Xは、筆界が現地において明らかでない甲地(A所有)と乙地(B所有)に関するA・B間の紛争について、過去に民間紛争解決手続を申し立てるかどうか、についてAから相談を受け、長時間にわたり詳細に事情聴取したことがあったが、結局民間紛争解決手続代理関係業務を受任するには至らなかった。Xが当該紛争について民間紛争解決手続においてBの代理人となることについて問題はないか。
また、上記の事例において、Aに対し、Bからの民間紛争解決手続代理関係業務を受任して差し支えないか、問い合わせを行い、Aが承諾した場合はどうか。それぞれ結論と理由を、合計300字以内で簡潔に記載しなさい。
土地家屋調査士XがAから相談を受け、長時間にわたり詳細に事情聴取したことは、土地家屋調査士法22条の2第2項1号における相手方から協議を受け賛助したことに該当する為、XがA・B間の紛争について民間紛争解決手続きにおいてBの代理人となることは出来ない。
またAが承諾した場合はどうかについても、XがBから民間紛争解決手続代理関係業務を依頼されてきていることをAに打ち明けてしまうことはBに対する守秘義務違反となる可能性が非常に高い為XはBの代理人となるべきではない。(235文字)
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